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著作集第5巻「資源ベースアプローチによるIT投資マネジメント序説」

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第5巻は、「資源ベースアプローチによるIT投資マネジメント序説」です。金承子さん、スディール マン ジョシさん、との共著で、『武蔵論集』Vol.52, No.3-4, 2005年が初出です。

多くのIT投資は、直接的な企業業績の向上に役立たないかもしれません。企業戦略の実施の支援をするものだからです。しかし支援機能を数値で表現することは極めて難しいことです。様々な要因が関係しIT投資がそれを支援したと言うことがなかなかできません。むしろ直接にはITを活用して社員の能力がアップした、すなわちケイパビリティの向上に焦点を当てるべきであると考え、このような人的資源に着目する理論として、資源ベースアプローチを取り上げてみました。

私たちの資源ベースのIT投資マネジメントでは、企業戦略、capability、そしてIT投資の関連付けを行うことが基本です。このようなアプローチは消して新しいものではないかもしれませんが、IT投資の評価を財務的で行う限り新しい分野のIT投資に関する効果評価が適切に行われません。むしろどのような能力を向上させるかを明確にすることがより直接的なIT投資の効果の測定を可能にします。この視点が資源ベースによるIT投資マネジメントの根幹です。

 従来のIT投資マネジメントは、投資意思決定のための採算性評価に関する研究がもっぱらで、意思決定支援に限定されていたと言ってよいでしょう。資源ベースのIT投資マネジメントはこの領域に初めて、「実践」の視点を取り入ることになりました。具体的に何を志向して投資するのかを問うものだからです。

事前にどんなに採算性が高いと評価されても、効果的な実践が伴わなければ、成果は限定的です。私たちのIT投資マネジメントが机上の理論構築ではなく、実務者が適切なIT投資の実践に向けて、スタートする動機を議論するようになりました。そのような意味で、画期をなす論文といえます。

スディール マン ジョシさんは、ネパールの留学生で博士課程に入学したいと私の研究室を突然訪問されました。私の初めての大学院生でした。勉強熱心で、私に熱く資源ベースについて語ってくれました。そのおかげで、この理論の成果をIT投資マネジメントに取り入れることができました。いまでもたくさん彼に感謝しています。しかし、私がサバティカルで形式上、指導教授を離れた折に、指導教授になった教員が、「文献研究など研究ではない、実証研究をしろ」といいはなち、彼の研究を壊してしまいました。泣いて彼が私に訴えたのをいまでも忘れることができません。その後、苦労されたはずですが、連絡が取れなくなりました。母国の政治的立場も微妙なため、心配しています。何もできなかった自分を恥じ入るばかりですが、このような、パワハラ的で偏執的な研究者が大学で闊歩しているというのも、今の大学の現実です。自分への反省と彼への思いをすこしでも、この著作でお伝えできればと思います。

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Size
772 KB
Length
28 pages
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